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新卒採用と中途採用どちらに力を入れるべきか?

【担当者からの一言】

人材を確保して事業を拡大していきたい。でも新卒と中途どちらに力を入れたらいいかわからない…そんな方に是非読んで欲しいです!



【目次】

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【イントロ】

「新卒を採用した方が、会社色に染めやすいから新卒に力を入れたい」――これはよく聞く話です。しかし、最近は必ずしもそうとは言えないことが分かってきています。

実際のところ、新卒学生の方が企業研究をしっかり行い、御社がどのような会社なのかを理解したうえでエントリーしているケースも多くあります。もちろん、中には「大手だから」という理由で入社を決める人もいます。

会社の“看板”だけで応募を集めた場合、人柄や価値観のマッチングが十分でないこともあり、結果として入社1年以内の離職率が高くなる傾向があります。

一方で、大手・中小を問わず、企業の内情や考え方まで理解したうえで入社を決めた人材は、福利厚生やブランド以上に「共感」を軸に意思決定をしています。そのため、定着率も高くなる傾向があります。

これが新卒の現状です。

では、反対に中途採用市場はどうでしょうか。

現在の中途市場は、明確に「拡大傾向」にあります。転職はもはや特別な選択ではなく、キャリア形成の一手段として一般化しています。特に20代後半〜30代前半は、「成長できる環境か」「市場価値が上がるか」という視点で転職を検討する傾向が強まっています。

中途人材の特徴は、“即戦力”であることです。すでに業界経験やスキルを持っているため、育成コストを抑えながらスピード感のある事業拡大が可能になります。創業期や拡大初期のフェーズでは、大きな武器になります。

一方で、中途は前職の文化や価値観を持っています。スキルはあるが、カルチャーフィットしないというケースも少なくありません。また、「より良い条件」や「成長機会」を求めて転職しているため、期待とのギャップが生まれれば再転職の可能性もあります。


これを踏まえて、新卒採用に力を入れるときと中途に力を入れるときと何をどうしたらいいかを紹介します。

1. 新卒は未来投資、中途は事業拡大投資

2. 新卒採用コスト、中途採用コストの違い

3. それぞれの注意点


【新卒は未来投資、中途は事業拡大投資】

まずは、新卒は未来投資、中途は事業拡大投資というところを紹介します。

組織行動論の研究では、企業文化の形成には「初期メンバーへの価値観浸透」が極めて重要だとされています。たとえば、ハーバード・ビジネス・スクールの研究では、企業のパフォーマンスと強い相関を持つのは“戦略そのもの”よりも“文化の一貫性”であると指摘されています。文化が共有されている組織ほど、長期的な業績が安定しやすいという結果です。

この観点で見ると、新卒採用は文化形成への長期投資です。

価値観や行動基準をゼロから共有しやすく、時間をかけて組織の“型”をつくることができます。実際に、エンゲージメント調査を行っているGallupのレポートでも、理念やミッションへの共感度が高い社員ほど定着率が高い傾向が示されています。

つまり、新卒採用は「将来の中核人材を育てる文化投資」と言えます。


一方で、中途採用についてはどうでしょうか。

労働市場の研究では、経験者採用は“即時的な生産性向上”に寄与する傾向があるとされています。特に拡大期の企業においては、既にスキルや業界知識を持つ人材を採用することで、立ち上がり期間を短縮できるというデータがあります。

また、組織ライフサイクル理論(Greinerの成長モデル)では、企業が拡大フェーズに入ると「創業期の価値観中心型マネジメント」から「専門性・機能別組織」へ移行する必要があるとされています。このタイミングでは、外部からの経験者、つまり中途人材の力が不可欠になります。

つまり、中途採用は「今の事業成長を加速させる投資」です。

新卒は、文化と未来への投資。中途は、生産性と拡大への投資。

どちらが優れているかではなく、「企業のフェーズによって最適解が変わる」というのが、研究ベースで見たときの結論です。


【採用コスト】

では次に、採用コストの違いについて整理していきましょう。

まず中途採用です。仮に年収500万円の人材を採用する場合、多くの企業が活用する人材紹介会社の成功報酬は、理論年収の30〜35%が相場です。つまり、500万円の30%であれば150万円、35%であれば175万円が紹介手数料として発生します。これに求人媒体への掲載費や採用担当者の工数、面接にかかる時間的コストなどを加味すると、実質的には1名あたり200万円前後の投資になるケースも珍しくありません。


ただし中途採用は、即戦力として早期に成果を出せる可能性が高く、事業拡大フェーズにおいてはこの投資を短期間で回収できることもあります。つまり中途採用は、金額は大きいものの「短期回収型の投資」と言えます。


一方で新卒採用は、構造が異なります。例えば求人媒体への掲載費で80万〜200万円、合同説明会への出展で1回あたり20万〜50万円、インターン設計や運営で数十万円、採用パンフレットや動画制作で50万〜150万円、さらにSNS運用に月5万〜20万円といったコストが発生します。年間で見ると300万〜600万円規模になることもあります。


仮に年間5名採用した場合、単純計算で1名あたりの採用単価は60万〜120万円程度になります。紹介フィー型の中途採用よりは低く見えますが、戦力化までに時間がかかるため、短期的な生産性という観点では回収期間は長くなります。


しかしここで重要なのは、新卒採用にかけた費用は「採用だけの費用ではない」という点です。採用動画はそのまま会社紹介動画として営業に活用できますし、SNS運用は企業認知の向上につながります。大学との接点づくりは中長期的なパイプ形成になりますし、インターンは口コミやブランド形成に波及します。つまり新卒採用費は、同時にブランディング投資であり、マーケティング投資でもあるのです。

仮に年間500万円を投資したとしても、それが認知向上や企業価値向上、既存社員のエンゲージメント向上、さらには営業時の信頼強化につながるのであれば、その費用は単なる採用コストではなく「ブランド資産への投資」と捉えることができます。

対して中途紹介フィーの150万〜200万円は、その人材1名に対する単発投資の性質が強くなります。もちろん事業拡大という観点では非常に合理的ですが、ブランド資産が積み上がる構造ではありません。


このように考えると、中途採用は短期回収型の拡大投資、新卒採用は長期回収型のブランド投資という違いが見えてきます。どちらが正解かではなく、自社が今どのフェーズにいるのかによって、投資の最適解は変わります。

採用は単なる人員補充ではなく、経営戦略そのものなのです。


【採用時のそれぞれの注意点】

では続いて、「それぞれの注意点」について整理していきます。

ここまで見てきた通り、新卒は未来への投資であり、中途は事業拡大への投資です。しかし、どちらも戦略を誤ると“コスト”ではなく“損失”になります。


まず新卒採用の注意点です。

新卒採用は文化形成に強い一方で、育成設計が曖昧なまま採用すると、最もリスクが高くなります。例えば年間500万円かけて5名採用したとしても、1年以内に2名が離職すれば、単純計算でも200万円以上が回収不能になります。さらに教育にかけた上司の時間コストまで含めると、実質損失はそれ以上になります。

若手離職に関する各種調査でも、「入社前後のギャップ」と「成長実感の不足」は主要な離職理由として挙げられています。つまり新卒採用は、採用広報よりも“入社後設計”の方が重要です。3年後にどのポジションにいるのか、どのように評価されるのか、どんなスキルが身につくのか。このロードマップが明確でなければ、理念への共感だけでは定着は続きません。


一方で中途採用の注意点は、「スキル偏重」になりすぎることです。

年収500万円クラスの経験者を150万〜200万円かけて採用しても、カルチャーフィットしなければパフォーマンスは最大化されません。組織心理学の研究でも、能力よりも“価値観の一致度”が長期成果に影響を与えるというデータがあります。特に中小企業や成長企業では、1人の影響力が大きいため、ミスマッチはチーム全体に波及します。


さらに、中途人材は転職経験があるため、環境が合わなければ再度市場に出る心理的ハードルが低い傾向があります。つまり中途採用は即効性がある一方で、流動性も高いという構造的リスクを持っています。


ここまでをまとめると、新卒採用は「育成設計が弱いと失敗する投資」、中途採用は「カルチャー設計が弱いと失敗する投資」と言えます。

だからこそ重要なのは、採用戦略を単体で考えないことです。

今の組織に足りないのは、理念を体現する若手なのか。それとも事業を一気に押し上げる推進力なのか。売上フェーズなのか、組織基盤構築フェーズなのか。

採用は人事の仕事ではなく、経営判断です。

新卒と中途をどう使い分けるか。それは、会社の未来の描き方そのものなのです。

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